先日レ・ミゼラブルのミュージカルを初めて見てきました!

映画版は以前に見たことがありましたが、オリジナルのミュージカルはやっぱり違いますね。歌だけで物語が成り立っているので、映画よりも抽象的で、まさにショーという感じです。

しかしイギリスで英語でのミュージカルでしたので、字幕や訳なども当然なく、歌詞を細かく聞き取るのはやはり難しいです。

そこで家に帰ってきてから歌詞を改めて見てみると一つ一つの言葉に色々考えさせられます。

なので今回はオリジナルの英語歌詞を楽しみたい方のために、物語をよく表すワン・デイ・モア(One Day More)を解説を交えながら訳していきたいと思います。

解説をしながらなので訳はなるべく元のままで、その意味を日本語で解説していきます。

VALJEAN バルジャン
 One day more もう一日
 Another day, another destiny 別の一日、別の運命
 This never-ending road to Calvary このカルバリへの終わりなき道
 These men who seem to know my crime 私の罪を知っているらしいこいつらは
 Will surely come a second time 必ずまたやってくる
 One day more もう一日

“never-ending road to Calvary”の、カルバリとはキリストが磔となったエルサレムにある丘(ゴルゴダ)のことで、処刑されるものは自分で十字架をそこまで運び歩かなければならなかった、つまりとても苦しい死に向かう道ということです。

バルジャンは追い回される中で自分はいつか捕まる、死に向かっていると感じているのでしょう。

MARIUS マリウス
 I did not live until today 今日までは生きていなかった
 How can I live when we are parted? 離れ離れでどうして生きていられよう?

“I did not live until today” 今日までは生きていなかったというのはつまり、あなたに出会った今日から本当の人生が始まったという意味です。

“How can I live when we are parted?”というのは質問になっていますが、日本語でも古典などでよく使われたように、答えのない質問をすることで、それは不可能であるということを強調しています。つまりあなたと離れ離れでは生きられないということです。

VALJEAN バルジャン
 One day more もう一日

MARIUS & COSETTE マリウス&コゼット
 Tomorrow you'll be worlds away 明日あなたは遥か遠くへ行ってしまう
 And yet with you, my world has started それでもあなたと、私の世界は始まった

“worlds away”はとても遠い距離/状況を表す表現です。世界(複数形)をまたぐほど遠く、つまりとんでもなく遠いところへ行ってしまう。これはコゼットがフランスを離れようとしている地理的距離と、マリウスが戦いの中で命さえ失うかも知れないという状況的な距離の両方を表しているでしょう。

次の”my worlds started”でのをworldは普通の意味での世界で、あたながいたことで、私の本当の世界/人生が始まったととれます。

EPONINE エポニーヌ
 One more day all on my own またもう一日私はひとりぼっち

エポニーヌはここで他の人が”One day more”と言っているところをひっくりかえして”One more day”と言っています。これはOne day moreだとやってくる未来の一日を強調し、ここではあと一日耐えれば世界が変わるという意味になりますが、One more dayでは今までの日々に足される一日を強調し、今と変わらない一日がまたひとつ、という意味になります。

またon my ownはby myselfと似た”一人で”という意味の表現です。ownやselfは日本語の”自身”と似ているので自分自身と共にある、つまりひとりぼっちという英語の表現です。

all on my ownでallを使うことで完全に、という風にひとりぼっちであることが強調されます。

MARIUS & COSETTE マリウス&コゼット
 Will we ever meet again? 私達はまた会うことなどできるのだろうか?

everというのは0か1かというような意味で、neverが0ならeverが1といった感じです。everではいつかは分からないが長い時間の中のどこかの時点で、という意味になります。

“Will we meet again?”でも「また会うことができるか?」という意味になりますが、everを入れることで、長い時間の中で一度でもという意味が加わり、このまま別れたらもしかしたらもう二度と会うこともできないかもしれないという不安が表現されています。マリウスはバリケードに留まれば死んでしまうかもしれないわけですしね。

EPONINE エポニーヌ
 One more day with him not caring またもう一日彼が気にもかけないまま

ここでもエポニーヌはOne more dayと言っているので、今までのように、with him、彼の側にはいるけれどもnot caring (me)私のことを気にかけもしないまま、という意味です。

MARIUS & COSETTE マリウス&コゼット
 I was born to be with you 私はあなたと一緒になるために生まれてきた

これは恋愛におけるよくある英語での言い方です。to be with youで一緒になる、これは日本語と同じように長期的に共にあるという意味にもなります。

EPONINE エポニーヌ
 What a life I might have known 分かっていたけどなんて人生だろう

“What a life”は英語でよくある”What”を使った強調の表現です。”How beautiful”(なんて美しい)などと同じ使われ方ですね。悪いことが続いた日など”What a day!”(なんて日だ)とよく言います。

“I might have known”は古い表現でこうなるだろうと思っていたので驚かないが、という意味です。さらに直訳すれば”知っていたかもしれない”ですね。

エポニーヌのマリウスとは結ばれない人生への落胆を表しています。まぁ彼の恋愛の手助けまでしてしまったわけですからね……。

MARIUS & COSETTE マリウス&コゼット
 And I swear I will be true そして私は真実であることを誓う

ここはそのまま訳すと意味が分かりづらいですが、英語圏での真実すなわちTruthには深い意味があり、これはキリスト教で唯一神を信じるように、真実とはただ一つのものであるという強い考えがあります。そのためTruthやTrueには日本語には訳しきれない絶対的真実というような意味があり、それが変化してTo be trueはあるようにある、あるべき姿でいるというような意味になり、日本語では主に誠実と訳されます。

またこの絶対的真実の意味から、キリスト文化には正直でいることや嘘をつかないこと、隠さないことこそが誠実であるという考えもあります、国にもよりますが。日本では「嘘も方便」ということわざがあるくらいですが、その点でもtrueと日本語の誠実では若干意味が変わるように気がします。

I will be trueというのは、つまり恋人に対して、嘘や浮気をせず、自分の本当のあるべき姿、あなたを愛している姿でいる、ということです。

意訳すれば「誠実でいます」で済みますが、誠実だと「浮気はしないよ」程度に感じられます。またhonestの訳も誠実や正直となりますが、それよりもtrueを使った、特にこの物語での”To be true”はそれよりももっと重い意味があると思います。

EPONINE エポニーヌ
 But he never saw me there でも彼はそこにいる私を見ることもなかった

ENJOLRAS アンジョルラス
 One more day before the storm その嵐までもう一日

MARIUS マリスス
 Do I follow where she goes? 彼女が行くところへ着いていくのか?

ENJOLRAS アンジョルラス
 At the barricades of freedom 自由のバリケードの所で

MARIUS マリスス
 Shall I join my brothers there? あそこで兄弟たちに加わろうか?

英語では親しい人をブラザーとよく呼びますね。日常でも実は親しくなくても道端で会った人でもカジュアルにbroなどと呼びます。

ENJOLRAS アンジョルラス
 When our ranks begin to form 私達の地位が確立する時

formは形作るという意味で、ここではランクができる、つまり虐げられた平民が革命によりきちんとした地位ができあがるという意味でしょう。

MARIUS マリウス
 Do I stay; and do I dare? 留まるか、そんなことができるだろうか?

この”dare”という単語は日本語にぴったりの訳が無いのでちょっと難しいですが、英語ではよく”Don’t you dare”(まさかそんなことしないよね)という言い方があります。dareは「まさかそれをする、する勇気がある」というような訳し方ができるので、ここではコゼットと別れ革命に参加する、その勇気が自分にあるかどうかの葛藤を表しています。

ENJOLRAS アンジョルラス
 Will you take your place with me? 僕と一緒に来て役目を果たすか?

Take placeとは、自分の場所を確保する、その役目を担うということです。なのでここでは革命に参加するというその役目を自分と一緒にやる意思があるか?ということです。またWillというのは強い未来への意思を表します。

ALL 全員
 The time is now, the day is here 時は今、その日はここに来た

The timeやThe dayの定冠詞theは共通の認識の何かということなので、皆が知っている、待っていたその運命の日や時であるということです。

VALJEAN バルジャン
 One day more もう一日

JAVERT ジャベール
 One day more to revolution 革命までもう一日
 We will nip it in the bud 蕾のまま摘み取ろう
 We'll be ready for these schoolboys 学生たちへの準備はできている
 They will wet themselves with blood 彼らは自らを血で濡らすのだ

ここでジャベールは学生をstudentsではなくschoolboysと呼んでいます。この呼び方は学校の幼い子どもたちというようなちょっと煽るようなニュアンスがあると思います。

“wet themselves with blood”はつまり、自分自身を血で濡らす、この戦いは無駄となり彼らは死ぬのでこれは自殺行為だということです。

VALJEAN ベルジャン
 One day more もう一日

M. & MME. THENARDIER テナルディエ夫妻
 Watch 'em run amuck 荒れ狂うやつらを見てみろ
 Catch 'em as they fall 倒れたところを捕まえろ
 Never know your luck 自分の運の良さは分からない
 When there's a free for all 入場自由の時は
 Here's a little 'dip' ちょっと突っ込んで
 There a little 'touch' ちょっと触って
 Most of them are goners どうせやつらはほとんど死んだようなもの
 So they won't miss much だから大して無くすものもない

下品なテルナディエ夫婦は英語も下品です。スラングが盛り込まれておりちょっと難しいですね。”‘em”は”them”の省略形でスラングです。

run amuckは熟語で、気が狂う、荒れ狂う、ような意味で、革命に向かう学生達をさしています。

Catch ‘emは物理的に捕まえるという意味ではなく、落ちてきたものをキャッチする、おこぼれに預かろうという意味です。

“Never know your luck”も主語が省略されていますが、自分の運の良さは分からない、つまり運がいいことがあるかもしれないよという意味です。

Free for allは誰でも入場オッケー、という意味の熟語です。

dipとtouchは両方こっそり盗むというような意味のスラングです。

Students 学生
One day to a new beginning 新しい始まりへの一日
Raise the flag of freedom high 自由の旗を高く掲げろ
Every man will be a king 全ての人は王となる
Every man will be a king 全ての人は王となる
There's a new world for the winning 勝利への新しい世界がある
There's a new world to be won 勝ち取るための新しい世界がある

ここは学生の2グループの歌う場面です。

“one day for a new beginning”ではなく”One day to a new beginning”としているところが、革命という目的のある行動であることを強調しています。

“Every man will be a king”というところは、manとなっていますが、manには男という意味以外に単に人という意味があるので、ここは全ての人は、という意味で良いのではないでしょうか。じゃないと全てのmanはking、womanはqueenって言わないといけなくなっちゃうので…。歌は語呂も大事ですからね;;

でも最近は英語界隈ではこのmanを人の代表として使うことを問題視する人が増えているのでこういう使い方も微妙になっていくのかもしれません。職業名など日本語の同じように最近は男女を表さない言い方がされています。

またkingというのは、王政で苦しんでいる民の、全ての人が王となる、つまり平等な国への要求ということでしょう。

また次に “There’s a new world for the winning”と言った後に”There’s a new world to be won”と言い直しており、これは未来への勝利へ向かっている、新しい時代は勝ち取れるものだということを強調しているのではないでしょうか。

最初のfor the winningも、勝利するためのとも言えるし、勝利した人への新しい世界とも言えます。

ALL 全員
 Do you hear the people sing? 人々が歌うのが聞こえるか

MARIUS マリウス
 My place is here, I fight with you 私の居場所はここ、あなたと共に戦おう

VALJEAN バルジャン
 One day more もう一日

MARIUS & COSETTE マリウス&コゼット
 I did not live until today 今日までは生きていなかった

EPONINE エポニーヌ
 One more day all on my own またもう一日私はひとりぼっち

MARIUS & COSETTE マリウス&コゼット
 How can I live when we are parted? 離れ離れになってどうして生きられよう?

JAVERT ジャベール
 We will join these people's heroes 私達も人々の英雄達に加わろう
 We will follow where they go 彼らの行くところへ着いていこう
 We will learn their little secrets 彼らの秘密を知るのだ
 We will know the things they know 彼らの知ることは私達も知ることになる

ジャベールがwillと繰り返すところが、willは強い意志による未来なので彼の警察としてのあり方を感じます。

VALJEAN バルジャン
 One day more もう一日

MARIUS & COSETTE マリウス&コゼット
 Tomorrow you'll be worlds away 明日あなたは遥か遠くへ行ってしまう

EPONINE エポニーヌ
 What a life I might have known 分かってたけどなんて人生だろう

MARIUS & COSETTE マリウス&コゼット
 And yet with you my world has started それでもあなたと、私の世界は始まった

JAVERT ジャベール
 One more day to revolution 革命までもう一日
 We will nip it in the bud 蕾のまま摘み取ろう
 We'll be ready for these schoolboys 学生達への準備はできている

THENARDIERS テナルディエ夫妻
 Watch 'em run amok 荒れ狂うやつらを見てみろ
 Catch 'em as they fall 倒れたところを捕まえろ
 Never know your luck 自分の運の良さは分からない
 When there's a free-for-all 入場自由の時は

VALJEAN バルジャン
 Tomorrow we'll be far away 明日私達は遠くへ行く
 Tomorrow is the judgement day 明日こそ審判の日

“Tomorrow we’ll be far away”はコゼットとフランスを離れるという意味と、死ぬかも知れないという意味の両方が感じられます。また明日は今日と違う一日になるという意味にも感じられます。

審判の日は革命という大きなできごとを、キリスト教における審判とかけています。

ALL 全員
 Tomorrow we'll discover 明日私達は知ることとなるだろう
 What our God in Heaven has in store 天国にいる我らの神が用意しているものが何なのか
 One more dawn 夜明けがもう一度
 One more day またもう一日
 One day more もう一日

ここはバラバラに歌っていた全員が一緒になる印象的な語句ですね。ここでTomorrow we’ll knowではなくdiscoverと言っているのは、既にある運命の未来を発見するということです。フランス語でも知ることをdiscoverということがあるみたいですね。英語は基本フランス語風の表現をすると洗練された雰囲気になるので。

そして次のWhat our God in Heaven has in store、ここで(歌では関係ありませんが一応)GodやHeavenを大文字で書くのは一つしかない固有のものなので固有名詞として大文字になっています。日本の神道などと違って一神教では神はひとつしかないので、大文字で書きます。

in storeというのはお店などだと在庫ですが、ここでは「目前の隠された未来」という意味です。天国の神が自分達の運命を既に握っていて、まさにもう見せようとしている、それを明日自分達は知ることになるという、非常に厳かな一文です。

そして最後にOne more day, One day moreとエポニーヌの使っていた表現を挟みながら歌い終わります。続いてきた苦痛の日々と準備、それを明日終わらせようという希望を感じる終わりです。

 

以上です、歌詞なのでネイティブでも受け取り方の違う部分が沢山あると思いますが、私の見解も踏まえ英語の解説と共に書きました。いかがだったでしょうか。

また希望があれば別の歌も解説したいきたいと思います。

ご意見、感想、指摘などあればどうぞコメントください。