私は母校武蔵野美術大学を卒業後、語学留学を経て、イギリスのエディンバラ大学に大学院留学しました。そして卒業後はイギリスで就職し、今もまだこちらで暮らしています。

留学が増えてきたとはいえ、それでもまだ大学院留学はスタンダードな勉強の仕方ではありませんし、それにあたり色々なことがありました。

総合的には留学して得たものが勉強に限らず沢山あって、留学して良かったと思っていますし、留学したこと自体には後悔はありません。しかしやはり楽しいだけの思い出とは言えません。

今回は留学して思ったこと、得たものや苦労したこと等をまとめたいと思います。

 

留学して良かったこと

1、多様な価値観に寛容になった

これは自分の中で一番変化した部分です。自分の国を出て勉強するの上で学ぶことは大学でのことだけでなく、普段の生活なども含まれます。

私は特に大学の寮やホームステイなどを選ばず、一般的なフラットメイト(ルームメイト)を探して一緒に住むという方法を取ったため、色々な国の人と暮らしました。

また留学中には外国人のパートナーもできました。(これはあんまり留学に関係ない出会いだったけど)

留学するにあたり語学留学もして、その中では色々な国の人がいろいろな目的で学校に通っていました。

その中で変わったのは色々な価値観に対する寛容さです。

以前は正直、狭い日本の中で生まれ育って、人はこうあるべき、家族はこうあるべき、家族はこうあるべき、というような固定観念というのがありました。

でもヨーロッパは色々な文化を持つ人が入り混じって暮らしています。特にイギリスは英語圏で移民の多い国なのでそれが顕著です。

例えば日常生活の中でも、出身国によって、生活の常識が大きく違います。掃除の仕方、食べ物の食べ方、インテリアから生活のスケジュールまで様々な常識を皆が持っています。これは逆に日本人じゃないからこそ違いが受け入れやすい部分もあるというか、ああこの国はこうなんだ、で済むということもあります。日本人だと逆に普通こうでしょ!?って思いたくなったり…。

例えば私の母は子供の頃夕食は皆でテレビを見ながらわいわいというのが当たり前で、父はテレビなんて厳禁で、静かに食べるものと思っていたらしくて、結婚当初はそれで喧嘩になったとか…。

でも国が違うといやうちの国ではこうだから!って言われるとじゃあしょうがないかって気になりますね。

具体的な例だと、うちのフラットメイトはチェコ人で、これはチェコ人だけじゃないんですが、ヨーロッパ人全般よく床を拭きたがります…。モップで水拭きって日本じゃせいぜい大掃除でやるくらいじゃないですか?あとは掃除機掛けで…って。

でもこっちじゃ漂白剤入りの水で拭きあげてっていうのをわりと頻繁にやる人が多い。もちろん個人にもよりますが、少なくとも日本よりは多い。

あ、でも日本でも教室の雑巾がけとかありますかね。

 

たまに日本人に会って泊まったりとかすると、ああやっぱりそうだよね!って気があって感動したりします。

小さい事ですけど、前に友達の家に泊まりに行ったら部屋に私用にタオルが置いてあったんですよ。その時にそういえばヨーロッパで遊びに行ってタオル置いてあったってないなって。日本だとお客さん用のタオルって用意しといたりするじゃないですか?でもこっちだとシャワー借りるねって言った時にあ、タオルいる?とかそんなもんで。なんかタオルを用意しておいて、これはあなたのものよって感じが日本式のおもてなしだな、と。

そんな小さいことなんですが、たくさんあります。

そんなわけで、やはりいろいろな価値観の中で生きていると、違うのが当たり前なんだっていう気持ちが育って、ちょっとやそっとの価値観の相違ではストレスが溜まらなくなります。違うのが当たり前だから。

これは語学留学の中でも培われた部分です。逆に語学留学の時の方が国籍がバラバラだったし、英語の勉強のためお互いの価値観について語り合うことが沢山あったので、ホントに英語以上のものを学びました。

宗教、家族、正義、健康などそれぞれの文化で違うデリケートな部分も真剣に議論しました。

これは日本で英語の勉強をしたり、あるいは日本で圧倒的マイノリティーとして生きる外国人と友達になるのでは身につかなかったことだと思います。

 

2、イギリスで就職する機会ができた。

これは個人的なことですが、学生のうちからアルバイトをしていたIT企業で今も正社員として働いていて、これは留学しなかったらなかったチャンスだと思います。今イギリスで移民に対して非常に厳しくなっているので、外国人が新しく就職するというのがすごく難しくなっています。まず企業がビザのスポンサーになってくれないとだめで、企業がスポンサーになるもの登録制でどの企業でもなれるわけじゃないのでこれがすごく難しいです。

なので留学する中でアルバイトから正社員に繋がったことは本当に幸運でした。

日本での生活に不満があったり、外国で働くことに憧れがあっても海外で就職というのは簡単なことではないので、留学はそのチャンスを大いに広げると思います。

私のようにアルバイトから始めたり、あるいは長期休暇中にインターンシップを受けたり、長期の留学でないとできないこともあると思います。

しかし就職事情は日本と大きくことなるので、海外で留学後に就職を視野に入れている場合には留学前から慎重に情報収集をして準備を始めないと大きなチャンスを逃すことになると思います。

 

3、日本の良さを再認識することができた

別に日本が嫌いで出てきたわけではありませんが、でも別に留学前日本に特別な感情は持っていませんでした。

しかし私は父の転勤で幼少期引っ越しを5回も6回もし、小学校も3校行きましたし、未だ出身地を聞かれると困るのですが、でも少なくとも日本を出てからは日本がふるさとだとはっきり言えるようになりましたし、やはり出てしまうと日本が恋しくもなります。

元々引っ越しが多くて、小さい頃から海外にも旅行などには行ってましたし、ホームシックというほどの辛い思いはしたことがありませんが、やはり食べ物は日本が一番だと思ったり、日本の桜が恋しくなったり、日本好きな外国人に沢山出会ったり、日本のことが外からの視点で色々分かるようになりました。

自分で思っていたよりも、日本が好きという人が多いなと思います。うちのフラットメイトのチェコ人も言ってましたが、日本が好きって人多いね、なんでだろうねって言ってます。彼女の日本に行ったことがないので絶対に行きたいと言ってますし、私がたまにつくる和食を見て日本のこと今まで寿司しか知らなかったよ!こんなに美味しいものがこの世にあるなんて知らなかったとまで言ってました。

正直日本って知名度低いですよ、ヨーロッパでは。遠い国で中国と区別のつかないひとが沢山いるし、しょっちゅうニーハオって声かけられるし。まぁ中国の人口が十倍だからしょうがないけど…。でも日本が好きな人はホントに深く愛している人が多くて、こんなこというとなんですけど、日本人だと分かると明らかに態度が良くなる人も結構います。

それは今まで日本にいる時や、旅行して浅い付き合いしかできないうちでは分からなかったことかなと。ひいき目じゃなくて、日本ってやっぱりいい国だなって。

あともうこっちで就職しちゃったので、日本で過ごせる時間は限られていて、今はもう旅行者、消費者として日本に遊びに行くだけなわけですが、消費者になると日本って素晴らしいです。逆に労働者としてどうなのかという疑問もありますが…。

 

逆に辛かったこと…

1、余計な年数がかかる

これが留学して何より辛かったことです。

留学するにあたり、どうしても語学力に不安が残り、まずは英語の勉強、そして出願をし入学し…日本とは卒業してから最短で留学しても半年時間が空きますし、ストレートに日本の大学へ行って卒業して就職した人に比べると、例え同じ大学院に行っても就職するまでに余計な年数がかかります。

これは留学の相談をムサビの先生にした時にも言われたことです。あと行き遅れるぞーって。それは余計なお世話ですけど!

でもホントに周りの人より一歩遅れます。それはつまり、久しぶりに大学の友達と会った時にご飯食べるお店選びに金銭的に戸惑ったり、スケジュールや話が合わなくなったり…。

それから親の視線も辛かったです。うちは留学に120%賛成という感じではなく、反対ではありませんでしたし沢山支援もしてもらいましたが、もうあまり喜んでいないのは見え見えでした。同級生はもう就職して親に奢ったりとかしている中自分はまだ生活費を出してもらったりしましたから…。

たった2、3年の差といえどやはりスタートが遅れるので辛いです。今回も就職三か月目で友達の結婚式に呼ばれましたが、私以外はみんな就職三年目くらいで、金銭的にも余裕があるし、自分は就活のごたごたで結婚式の出欠もぎりぎりまで分からず、現地まで行くのもカツカツで、こういう小さいところで、自分は皆より出遅れてるんだっと実感します。

分かっていたことですが、就職しているのが当たり前の歳で強い意志を持って勉強をし続けると言うのは結構気力がいります。

そういう場合はやはり同じ留学をしている仲間を見つけ励まし合う、就活を全力で頑張って不安を少しでも減らす、家族には勉強に対する熱意を見せ応援してもらう。など色々対策を練って頑張りましょう。

 

2、金銭的負担

どうしても留学となるとお金が必要になります。

日本ではヨーロッパやアメリカと違って奨学金の制度が少ないし、(ローンではなく)外国人はたいてい学費が高いし、外国でアルバイトも日本と同じようにはいかないし、物価も違うし…。

私は留学前にできるだけお金を貯めて、留学中はとにかく節約しました。家も借りられる中で本当に安い家を探しましたし、普段の食費も頑張って節約しました。

また学費は一部ではありますが母校のムサビが出している奨学金制度に応募して給付型の奨学金を受け取りました。少ないですが、探せば日本にも給付型(返さなくていい、もらえる)の奨学金がありますし、複数申し込めるものもあります。

現地でのアルバイトもたいてい働ける合計時間などが決まっていますができますし、それが就職に繋がったり、友達ができたり、海外での勉強以外の一面を見ることにもつながるのでもし余裕があればしてもいいと思いますが、やはり勉強が一番なのでホントに可能ならば、ですね。

しかしそれでも生活費・学費全額は賄えなかったので父にお金を借りました。何も言わずに貸してくれた父には頭が上がりませんが、就職も決まったのでこれから頑張って貯金をして一日でも早く返せるようにしたいです。

 

3、価値観の変化との葛藤

これは良かったことの1との対比になりますが、生まれ育った価値観が壊れるというのはとてもショッキングな体験です。

今までこれが当たり前だと思っていたこと、これが正しいと思っていたことに疑問を感じるということは、喜びでもあり苦しみでもあります。

例えば家族の在り方の違い。ヨーロッパで一番考えが変わったことのうちのひとつが、結婚や家族の持ち方に対する考えです。

今までは結婚して、一生一緒にして、子供を育てるということが正しいと思っていましたが、ヨーロッパでは離婚が当たり前になっていて、離婚しても子供を一緒に育てる共同親権が普通で、別に不倫とかDVとかがなくても、単にもう愛し合っていないから、気が合わないからと日本人よりもずっと気軽に離婚します。それこそほんと普通の男女(あるいは同性同士の)交際が終わるのをちょっと大事にした程度です。

離婚しても顔を合わせて一緒に子供を育てる、養育費がとか言わずお互いに半々ずつだし、半々ずつ面倒を見る、新しくパートナーになった人もそれが当たり前なので前のパートナーに顔を合わせてうるさくいう人もいないし、離婚しても父親は父親、母親は母親で、新しい親のパートナーが新しい親になったりしない。

それが当たり前だから離婚した家の子供が可哀想という考えもありません。

そういうことを目の当たりにすると、逆に自分の中での幸せの形も変わってきて、日本で見る家族でもう別に愛し合ってないなら、別に一緒に暮らす必要ないのに、と思ってしまったり、もし日本人と付き合っても一生一緒にいなくちゃいけないわけじゃないしという気持ちを持ったまま付き合いそうだなとか。

結婚は一例ですが、他のことでもつまり日本のやり方が合わなくなってしまいそれが葛藤となるということです。

もちろん様々なことに対する価値観にそれぞれ合う合わないがあるわけですが、例えば結婚については、子供より親本人の幸せを優先する文化、共同親権の文化、家族の形の多様性を素晴らしいと思う気持ちと、日本の家族の絆、価値観の差異を理解し合う文化、あるいは周りの人の目などが矛盾して、苦しい思いをすることもあります。

正に知らなければ綺麗なままで済んだのにという感じですが、そういう部分が留学をして、勉強以外の部分で自分を大きく変えました。

 

そういう葛藤も成長として受け入れるのかどうか。

逆にそういう機会も持てずに留学を終えてしまうのはもったいないかもしれません。

 

でもやはり振り返っても、留学して後悔はありませんし、留学してこその今の私だと思います。私の場合は留学して人生が大きく変わりました。そのまま就職するとは思っていなかったし、今のチェコ人のフラットメイトとこんなに長く一緒に住んで家族みたいになるとは思ってなかったし、自分の中で人生の価値観がこんなにも変わるものなんだって驚いています。

ホントに今までの自分は視野が広いと思っていたけど、狭かったし、英語だって今思えば元々喋れていたけど理解が甘かったし、留学して私の人生は格段に豊かになりました。

留学したいんだけどどう思うと友達に相談されたら、誰にでも絶対しなよ!と言えるわけではありませんが、でも人生へのチャレンジを辞さない性格なら、きっと留学が人生の大切な要素になると思います。

これから留学をされる方は、貯金や英語の勉強や準備も大変だと思いますが、もっと沢山の日本人が留学をして、豊かな人生を歩めるよう、ブログでの情報発信という形ではありますが、皆様の手助けになるよう願っています。