私は日本では、武蔵野美術大学、通称ムサビのデザイン情報学科に通いました。
そして卒業後イギリスのエディンバラ大学の大学院、芸術学部のデザイン&デジタルメディアコースを修了しました。
そこで今回は私の通った二つの学校の違いを書いていきたいと思います。
どちらもどちらで、とても勉強になりましたし、行って良かったって思っています。しかしやはり国も違うわけなので、それぞれに特徴があるな、と感じました。
今回はそんな二つの美術学校、内容も似ているコースへ通った私が、それぞれの特徴を四つのカテゴリーに分けて比較しました。
1、授業
まず、ムサビはとにかく面倒見が良い。ムサビで四年生の時、ゼミにフランス人の男性が居たんですけど、彼に私は卒業後大学院留学したいんだってことを相談していたんですが、彼は自分の通ったフランスの大学と比べて、ムサビほど至れり尽くせりだって期待しない方がいいよって言ってました。
悪い意味ではないんですが、それが留学して分かったような気がします。
とにかくムサビは一年のうちなんか朝から晩まで授業があるし、週5日どころか6日ありました。結構ハードだったし、課題も山ほど出ました。
しかしホントに先生が決めたカリキュラムを黙々とこなすという部分もあって、自分自信の作品と言って良いのか、と迷うようなことも。
その点エディンバラ大学では、授業は週に3日しかありませんし、学部の友達もそんな感じです。また課題も最終的にはこんなの作ってね、でそこから最後まで結構放っておかれます。
相談すればもちろん先生にアポイントメントを取って指導を仰ぐこともありますが、ムサビに比べたら先生に会う回数が格段に少ないです。
ちょっとたまに先生それってちゃんと準備してきたの?って授業もありました。
ムサビではどの授業も責任を持って行われ、よく作りこまれた課題やスライドが必ず用意されていました。試験などもかなりシステマティックで、大学もそれをサポートしていました。
エディンバラ大学では課題はしょせん課題、少なくともうちのコースでは間に合わなければいくらでも交渉できましたし、学校で良い点を取ることよりも実際の制作そのものを良くすることにより重点が置かれていたと思います。
何時間もここで課題を進めた、思い出のアトリウム。
室内だけど天井が窓なので明るいです。
2、他学科との繋がり
ムサビでは、美術総合大学なだけあって色んな学科のための色々な授業があり、自分と少し専攻の違う授業でも割と自由に受けられたという印象があります。
実際学科専門の授業も交換制度があったり、各学科の施設へのアクセスもあったし、学科同士のつながりも結構ありました。
ムサビ生だ!っていう繋がりを他の学科の人とも共有しやすかったです。キャンパスが一つでちゃんと敷地が囲われてますしね。
それに比べるとエディンバラ大学は学科ごとに建物が違って、その建物は街の色々な場所に散らばっているので、学科や学部同士の繋がりはかなり希薄です。
同じエディンバラ大学というだけではあまり仲間!という気持ちにもなりません。
感覚でいうとホントうちの学部は新宿だけどあの学部は渋谷~みたいな感じで、ホント別の学校という感じです。
大学共通の施設も沢山ありますが、積極的にサークルなんかに参加しない限りなかなか他の学部の学生と仲良くなることもないと思います。
3、学生のレベル、学生同士の競争
これは、エディンバラ大学でさすがだと思った部分です。
エディンバラ大学の芸術学部は、エディンバラ大学に統合されたばかりですし、特別イギリスの中でも有名な学校という感じはしませんが、やはりエディンバラ大学のネームバリューでしょうか、エディンバラ大学を総合的に見れば世界大学ランキングでも上位の常連ですし、その有名大学の一部になったことでやはり学生の質も上がっているんじゃないでしょうか。
先生たちも以前よりも多くの学生が来ていると言ってましたし。
ともかく、入学条件もありますし、誰でも入れる大学というわけではないので、ある程度選りすぐられた学生がいると思います。
日本での我が母校、武蔵野美術大学も学生のレベルはとても高かったですし、皆高い志も持っていました。有名な企業やデザイン事務所に入った友達も沢山いますし。
しかし私は美術大学として世界的に有名というわけではないものの、エディンバラ大学の方がムサビの時より学生のレベルは高かったなと感じました。
大きな違いとしては、ムサビは良いアイディアの時点である程度許されるというか、コンセプトレベルでも受け入れられる部分がある。エディンバラ大学では実際の成果物にかなり点数が入るというところです。
ムサビでは卒業制作でさえ、アイディアをプレゼンしてるような形でも許されてることがありましたが、エディンバラ大学では実際の制作物の要求レベルが高いです。
あとこの印象の違いはもしかしたらプレゼンの仕方の違いとも関係があるかもしれません。
ムサビではどの授業でも必ずプレゼンがありました。結構三週くらいかけて順番に全員プレゼンするということもあって、他の学生の作品も見る機会が死ぬほどありました。
対して、エディンバラ大学ではプレゼンテーションというのがほとんどありませんでした。先生が時々良いと思った作品を紹介するだけで、あとは直接学生同士で見せ合うしかなく、課題が終了しても学校を通して他の人の作品を見ることはできません。全員が他の人に見せたいとは限らないから。だそうです。
しかしこれが私には衝撃でした。今まで常に他の人の作品を見、勉強し、もしくは誰が上手いのが知って話したり、他の人の作品を見ることで数えきれぬほどの収穫があったと思うのですが、それがエディンバラ大学では驚くほどありませんでした。
これが最初はとにかくショックで、悲しかったんですが、よく考えると、全員分の作品を見るとその分時間も取るし、素人の作品なわけで、どれもがレベルが高いわけではありません。その点エディンバラ大学では常に上位10%分くらいの作品だけを見続けることになります。
これが結構モチベーションになっていて、また全体のレベルを上げることにもつながっていたと思います。
また紹介された時はとても嬉しいです。ちなみに私の作品もちょこちょこ良い例として紹介されました。特に3DCGの授業は成績が良かったんですが、次の年でも紹介されたらしいです。次の年の知り合いがビデオ見せてくれた。カメラワークの参考に紹介されました。嬉しい。
そういうわけで、常に良い作品だけを見るので、プレッシャーも結構かかりますし、妥協の気持ちが湧いてきません。あ、あんなもんでもいいのかっていうのがないので。
中間提出や発表というのもかなり少なくて、それも最初はすごい嫌だったんですけど、逆に最後に出てくる作品を見ると、もういいやって思うポイントがないので、課題に全力を注げる形だったのかもしれないと思うようになりました。
ムサビで卒業展示を行った大展示場。
4、課題でのサポート
上記の通り、ムサビはとにかく面倒見が良いです。
課題の進捗度をかなり細かくチェックされますし、卒業制作にいたっては私のゼミでは毎週先生に会って作品を見てもらうことができました。
エディンバラ大学では数週間に一度です。その他では頼めば、です。
手抜きと言えば手抜きです。
課題をやるにも、エディンバラ大学では役立ちそうなwebサイトや書籍のリストをどーーんと配られたり、そんな感じです。
ムサビでは毎週これをやって、これを読んで、こうしてああしてって超細かく決まってました。
皆で一緒に勉強、という感じです。
エディンバラ大学ではリソースは提供されて、その後は自主性をかなり重んじられています。
総合大学だけあって、教材はいくらでもあります。立派な図書館がいくつもありますし、使える機材もムサビよりずっと太っ腹だって思いました。ノートパソコンまで借りられます。
かなり挑戦的なこともできます。
ムサビは用意された中でやる、計画に従うというところが多いです。
なので勉強してる感でいうと、ムサビの方がコスパがいい感じはします。
提供されてる感。
エディンバラ大学は、勉強の仕方を学ぶというか、結局自分たちで勉強してるよな、って思いました。
まとめ
ムサビ
- コスパよし
- 授業は至れりつくせり
- 他の学生の作品を全て見られる
- 他の学科との関わりも強い
- コンセプトが良ければ成果物には甘い
エディンバラ大学
- 割と放っておかれる
- 教材が豊富
- 学生のレベルが高い
- 常に良い作品だけを目にする
- 最終成果物がものをいう
もちろん、完全に私の主観ですし、日本でもイギリスでも一校しか知らないわけなので、同じ国でも様々な学校があると思います。それでもこの情報が何か留学に興味のある方などの参考になれば幸いです。
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