イギリスの大学院を出て、イギリスで働き、もちろん英語を日常的に使っているわけですが、よく日本人には英語どうやって勉強したんですか? とよく聞かれます。小中高での英語の授業や語学学校での勉強も役に立ちましたが、英語を読むスピード、英単語力が一番伸びたのは読書かなと思います。

言語はやはり訓練的な部分が多いので、単語や文法だけを訓練しても読む力は簡単には手に入りません。逆に読む訓練は単語や文法の理解につながり、総合的な英語力を底上げする役に立つと思います。

大学院入学前に英語を読むスピードが遅すぎて、入学条件があって提出しないといけなかったiELTSで、三回受けた二回目でリーディング6.0がしか取れなくて、要求スコアは6.5だったので、このままではやばいと思ってリーディングの勉強に集中して、一か月後iELTSを受け直したところなんと8.0という高スコアを取ることができました。それからも英語での読書を続け、今では英語での読み書きに抵抗はありません

勉強中は、とにかく多読、日本語を全て断ち切って、ニュースも読書も全て英語で行いました。元々本が好きでしたが、洋書をまた原文で読むというのも、翻訳しきれない部分も沢山あるので良いと思います。

iELTSや他の英語の試験を受ける人も、単に洋書を読みたい人も、大学院入学前に読んだおすすめの英語の本や普段読んでいるお気に入りの本を紹介するので是非モチベーションあげて頑張ってください!

おすすめの洋書7選

 

1、「Tom’s midnight garden」(トムは真夜中の庭で)

 

Tom's Midnight Garden
Philippa Pearce
Greenwillow Books
1992-10-30

 

 

総合おすすめ度★★★★★
単語力★★☆☆☆
内容★★★★★
読みやすさ★★★★☆

Tom’s midnight gardenはイギリスの古典児童書です。東京の母校にいた時にイギリス児童文学という授業を取って、そこで先生がすごい好きな本と推していた本です。「最後の方絶対泣いちゃうんだよね~。」なんて仰っていたので、児童書でそんな感動するのかと気になり、読んでみましたが、先生の仰っていたとおり、本当に子供の時のワクワクがよみがえる、素晴らしい本です。

主人公のトムが夏休みをおじさんの家で過ごすことになり、その家の庭で夜中に不思議なことが起こるというファンタジーストーリーです。子供の頃の純粋なワクワクと、大人になってそれを読むなんとも言えない切なさとが入り混じって胸がギュっとなります…。

英語の勉強という点では、子供向けなので難しい単語が出てこなくて、(植物の名前とか分からないことも多いですが、アカデミックな英語という意味で)単語力強化にはあまり役に立ちませんが、読むスピードを上げるという点では楽しみながら無理なく読めます。

とりあえず簡単で、ストーリーもシンプルで、かつミステリアスな部分もあって先が気になるのでどんどん読めるし、初心者におすすめです。

でもとにかく話自体が素敵な本なので総合おすすめ度は5をつけました。

古い物語なので様々な出版社が出していて、カバーがいろいろバージョンがありますが、これが私の持ってるやつです。個人的には一番カバーが絵も美しくて可愛いと思います。

 

 

2、「The old man and sea」(老人と海)

 

The Old Man and the Sea
Ernest Hemingway
Penguin Books Ltd
1973-07-26

 

 

総合おすすめ度★★★☆☆
単語力★★★☆☆
内容★★★☆☆
読みやすさ★★☆☆☆
これも古典小説です。著者は文豪のヘミングウェイです。ヘミングウェイと言えば「誰がために鐘がなる」が有名ですが、 長いので、今回は短編をご紹介します。これを読んだ頃は古典を色々読みたいと思っていました。英語の勉強をしたいのももちろんですが、どうせ読むなら、有名な本を死ぬまでに読めるだけ読みたかったので。

しかしこれは短かったから読めたものの、結構ページを進めるのが辛かったです。教科書に載りそうな、固い内容で、まさに文学という感じです。次から次へと色んなことが起こるという物語ではなく、老人が海で勇敢に漁するのをひたすら描写…みたいな。詩的ですけどね。
でもボキャブラリーも海とか船に関するものが多くて、ちょっと偏ってるのでそんなに良いとも言えないし、これはあまりお勧めじゃないです。ただヘミングウェイは文学史の中でも重要な人物なので、一作は英語で読む価値があると思います。

これも色んな出版社から出てますが私が買ったのはこれ。短編の古典小説なので価格は比較的安いです。

3、「Kallocain」 (カロカイン)

 

Kallocain (Library of World Fiction)
Karin Boye
Univ of Wisconsin Pr
2002-04-02

 

 

総合おすすめ度★★★★★
単語力★★★★★
内容★★★★☆
読みやすさ★★☆☆☆

こちらはスウェーデンの友達にもらったスウェーデンの小説の英語版。日本では全然有名じゃありませんが、結構面白かったので紹介します。

英語の勉強という点ではかなりおすすめです。文章が非常にアカデミックで、論文でも読んでるかのようです。主人公が科学者なのでそういう語り口なんです。

あらすじは、未来の管理社会で、科学者の主人公が自白剤を開発し成功するという話。注射を打つと、なんでも自白してしまう薬で、薬の効果が切れても本人はその時の記憶が残ったままで、自白したことを覚えているという。でも主人公は自分の奥さんが浮気をしていると思っていて、ホントに一番自白させたいのは奥さんっていう。

舞台の管理社会がいわゆるディストピアで、オーウェルの小説「1984年」なんかが好きな人は絶対好きだと思います。1984年よりあらすじがクリアなので読みやすいと思います。まぁでもそういうディストピアのアイディアを書いたのが1984年なので先駆者というのがオーウェルのすごいところですが。

たぶんこれが英語の学習の点では一番役にたちました。わりと新しい本だしそんなに有名じゃないので安くはないですがこれはおすすめです。スウェーデンの本というのもあまりご存知の人も少ないと思うので、そこもまた面白いと思います。元々が英語ではないので英語訳で読んでいるという問題はありますが、スウェーデン語と英語は比較的近い言語なので、訳について大きな問題はないと思います。

たまにかなり難解な書き方も出てくるのでそこはバンバン飛ばして、勉強のためにはとにかく完読することが大切だと思います。何度も出てきて分からない単語だけ調べる感じで一週間くらいかけて読みました。通勤時間に少しずつ読み進める…とかだとかなり時間はかかると思います。やっぱり英語が難しいので。難しいというかアカデミック。なので、勉強には最適です。

内容も哲学的で、読んだ後の充足感もたっぷりです。やはり読むなら勉強のためだけでなく、楽しく読みたいですよね。これは読書好きな人にもおすすめできる一冊です。

 

 

4、「The Cather in the Rye」(ライ麦畑で捕まえて)

 

The Catcher in the Rye
Jerome D. Salinger
Klett Ernst /Schulbuch
1994-01

 

 

総合おすすめ度★★☆☆☆
単語力★☆☆☆☆
内容★★★★☆
読みやすさ★★★☆☆

タイトルの和訳が素晴らしいで有名なこれも古い本ですが、有名と言えど、これはいけません。英語の勉強には使えません。なぜなら英語がとても汚い。スラングだらけで、わけわからないし、これを覚えてはいけない。じゃあ紹介するなという話ですが。

でも有名な本なので一度は読んでみたいってところでしょうか。

内容はちょっと渋いアメリカの映画みたいな雰囲気の、青春物語で、海外の学生生活ってこんなんかなーと感じるにはいいかもしれません。でもこれで英語勉強したらいけません!

妹がオーストラリアに住んでいた頃、英語一緒に勉強しようって言って同じ本を買って、スカイプつけながら同じページを読んでたんですが、辞書ひきながらこれおかしくない? って数ページで気づきました(笑

逆に英語で罵り合いもできるくらいスラングを覚えたいという人は、この本で訓練するのが良いでしょう。すぐに口が悪くなると思います。ただスラングは国ごとに大きく違うので、イギリスで暮らす場合にはイギリスのギャング小説などを探したほうが良いと思います(笑

 

5、「Lolita」(ロリータ)

 

Lolita
Vladimir Nabokov
Penguin
2011-08-25

 

 

総合おすすめ度★★★★★
単語力★★★★★
内容★★★★☆
読みやすさ★★★★☆

これは読書好きの私も日本語英語で読んだもの全て合わせて一番に好きな小説です。「ロリコン」という言葉の語源になった本で、「ロリータ」というのは登場人物の少女ドロレスのあだ名。「ロリータみたいな幼い女の子に恋すること」をロリコンというようになったのです。

著者はロシア人のウラジーミル・ナブコフで、この本は非ネイティブの書いた英語の本の中で最高傑作と言われるほど言語的に素晴らしい本です。ナブコフはロシア人ですが、この小説は英語で書かれ、それをナブコフはロシア語にも自分で翻訳しました。なので原書は英語であり、英語で読む価値があります

高校生の時に日本語で読んで、とても衝撃を受け、大学生になってからまた英語で読みました。

これもカロカイン並みに固い英語で書かれているので、英語の勉強という点でも素晴らしいですし、カロカインは英語により近い言語であるスウェーデン語がオリジナルなので表現も難しいですが、こちらは難しい表現もありつつも読みやすい。

韻を踏んだりしているところも有名で、冒頭はホントにいい意味でぞっとします。主人公のドロレスへの愛を一行でそこまで表すという。

これはホント英語で読んだ時の方がずっと面白かったです。

少女愛がテーマなのでもちろん倫理的にうーんというところもあって、執筆された当時もとってもスキャンダラスで、出版にこぎつけるのも大変だったという代物です。あと外国人の友達には結構これが好きというとギョッとされたりするので、国によってはちょっと人前
で読むのは気を付けてください。特に男性の場合には要注意かも知れません。

でもカロカインより、やや文学よりな内容と文体なので、アカデミックな英語の勉強としてカロカインの次かなという感じです。でも長いし、初めて読む洋書としてちょっと難しいかも。映画化もされてますね。

でも読書に使う時間がたっぷり取れて、ガッツリ英語力をあげたいという人は挑戦するのも良いかも知れません。

 

6、「Brave New World」(すばらしい新世界)

 

Brave New World
Aldous Huxley
Reclam Philipp Jun.
1992-03

 

 

総合おすすめ度★★★★☆
単語力★★★★☆
内容★★★★★
読みやすさ★★★★☆

これも超お気に入りの一冊です。ディストピア小説の傑作としても有名な本です。

また別のディストピアSF小説ですが、SFって設定はよくても物語自体がいまいちってよくあるんですけど、これは設定、物語、文体どれもピカイチです。

ヨーロッパの文学って韻を踏んだり、リズムをつけたり、言葉遊びというのをかなり重視してるんですが、これはそこもばっちりです。言葉遊びは原書で読まなくてはその価値を理解できないのでこういう本こそ、原書で、英語で読む価値が高いです。

未来の階級社会を描いたお話で、主人公が物語が進むごとに移っていくタイプの小説なんですが、それぞれのキャラクターが魅力的だし、様々な未来の舞台がまたワクワクします。

もう最後の最後の一行まで釘づけだったし、他のディストピア系小説より現実感がありました。

上記の通り言葉遊びが多く出てくるのですが、それも感動する素晴らしさです。物語に出てくる上流階級の人間が、この小説の世界の社会いろいろなことわざを使うんですが、例えば
“civilization is sterilization” (文明は消毒なり)
韻を踏んでいるので日本語だとその韻が分からず、へ~で終わっちゃいますけど、英語だと語呂も良いのがよくわかります。

英語の勉強としては、割と柔らかい表現も多いので難し過ぎず、易し過ぎず。でも場面や登場人物が結構変わるので色んな分野に言及している点では良いかも。

 

7、「Hitchhiker’s Guide to the Galaxy」(銀河ヒッチハイク・ガイド)

総合おすすめ度★★★★★
単語力★★★☆☆
内容★★★★☆
読みやすさ★★★★★

こちらは私の周りの人の中でも、一番好きな本とよく聞くSFコメディの傑作です! 元々はイギリスのラジオ番組用に書かれた物語なので、カジュアルな内容です。

タイトルの通り銀河を旅する物語なのですが、主人公が銀河へ旅立つことになった経緯もおもしろいですし、とにかく全編にユーモアがふんだんに散りばめられています。読みながら、クスクス笑ってしまうことは必須です。

カジュアルな内容なので読み進めるのも簡単ですし、それでいて英語も比較的フォーマルなので英語の勉強にもとてもオススメです。

宇宙が舞台なので、実際には存在しない言葉なども沢山出てくるので、単語力強化としては、ある程度の基礎がないと勉強には繋がらないかもしれません。でも内容的には気軽に読める本なので、鞄の中に入れておいて、気が向いた時に少しずつ読み進めていくのも良いでしょう。

こちらもクラシックな本なので、沢山の出版社が出しています。イギリスではかなり低価格で買うことができます。私は実は飛行機の中でなくしたりなんだかんだで今までに違う表紙で三冊買いました;; もちろん内容は同じですが。

 

まとめ

参考書なんかで勉強しているだけだと気も滅入りますし、本が好きな人はこの機会に洋書を読み始めるとよいのではないでしょうか。私はSF小説が好きなので今回紹介した本はSFが多めでしたね。でもSF小説は比較的フォーマルな文体が多いので、アカデミックな英語を身につける上では良い題材だと思います。

読書はやはり総合的な英語力向上には最も良い方法です。自然な表現を沢山知るというのがスピーキングやライティングの向上にも繋がると思いますし、本を読むようになってから、リーディングが苦痛でなくなりました。読むスピードも多読を始めて一か月くらいでぐんぐん上がるのが感じられました。

また単語を真に理解し身に着ける上でも、読書はとても有効な方法です。辞書で引けば英語の日本語訳を知ることはできますが、言葉というのは言語毎に全く同じとは限らず、訳せば同じでも、微妙に使い方が違ったり、組み合わせる言葉が違ったり使える場面が違ったりします。あるいは、英語ではとてもよく聞く言葉なのに日本語にはぴったりの訳が無い場合だとか、英語独自の表現やことわざなどもありますが、それも読書という、状況や文脈を含めて勉強できる環境により、強固な単語力を身につけることが可能になると思います。

というわけで、洋書の多読、読書は英語力を総合的に上げる、大変優れた方法であるということです。

もちろん単に英語だけでなくて、人生の教養として、有名な本を読むことは文学の知識や、人生の教訓を学ぶ上で役に立ちます。英語ができてこそではありますが、翻訳するとどうしても失われる部分はあるので、特に韻などのニュアンスは訳しようがない部分もありますし、小説を英語で読むのは大変意味のあることだと思います。

なので、私は全ての英語学習者に読書を強く勧めます

また面白い本があれば紹介します! もしブログを読んでくださった方でお勧めの本があればぜひコメント欄で教えてください。