ヨーロッパでは今ほとんどの国で同性婚が認められていて、認められていない国でもパートナーシップ法などで異性婚と変わらない権利が認められている場合が多いです。

 

同性婚制度の世界での現状

こちらはWikipediaの同性婚のページ英語版にある地図です。2012年の時点での世界で同性婚やそれに同等の制度がある国が青で示されています。

紺色が異性同性に関わらず同じように結婚できる国、青色がパートナーシップ法など同等の法律がある国です。

日本では残念ながら、自治体が同性婚支援のカップル証明書を発行している場合などはありますが、法的に有効な結婚に同等の法律はありません。そのため同性カップルはお互いの将来を守るため現時点では養子縁組をして、親子という体で家族になるしか方法はなく、対等な大人として家族になる方法は法的にはありません。

上記のページに、同性婚制度に賛成している人が各国にどれだけいるか、というグラフがあります。日本はそれによれば2016年のデータで同性婚賛成派は33%。それより賛成派の少ない国は先進国だと韓国とシンガポールくらいです。また日本は中立派が表では世界で一番多くて、40%になっています。

中には、賛成派が50%を切っていて、反対派がそれを上回っていても同性婚制度のある国がいくつかあります。ブラジルとコロンビアです。きっとブラジルやコロンビアではより発言力のある人が、アクティブに同性婚制度導入を目差し運動を起こしたのでしょう。

日本では中立派、つまりどちらでも良いという人が多いので、それに比べれば制定することはさほど難しくないかもしれません。

このように世界でも先進国ではほとんどの国で導入されている同性婚制度。私はこの同性婚の制度が日本にないのがとても残念だと思っていて、その理由は、同性婚制度が当事者以外にも、日本の家族のあり方に大きな利益をもたらすと思っているからです。

同性婚を認めることで、日本での家族のあり方の多様性を推し進めることになると考えています。

 

世界の様々な家族の形

世界の結婚のあり方

厚生労働省の結婚に関する意識の資料の図表2-2-1によると、2008年のデータで日本では子供のいるカップルで結婚していない割合、つまり婚外子の割合は2.1%。対して、フランスでは52.6%、スウェーデンでは54.7%と半数を超えています。つまり、子供がいても、結婚する方が珍しいということ。結婚がそれだけ社会的意味を持たなくなっているということでしょう。

ヨーロッパには慰謝料という文化がなく、これは日本がアメリカから持ち込んだ文化で、離婚する時にどんな理由であろうとも一方がもう片方に慰謝料というお金を払うことはありません。

また協議離婚という考え方も世界では一般的ではなく、Wikipediaの離婚の項によれば世界で協議離婚という制度を持つのは、日本、中国、台湾、韓国くらいで、あとは19世紀にフランスにもあったという話です。つまり世界的には、離婚するのに、両者の合意は必要なく、片方が離婚したければできてしまい、結婚という制度はカップルの両方が同意している間のみ有効ということになります。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構の国際労働比較 第5-11表によれば、フルタイム労働者の男女の賃金格差は日本では33.9%、これは先進国では韓国の41.8%に次ぐ高さで、ヨーロッパでは表の中だとイギリスの26.3%を除き25%を超えるところがない、つまり女性が男性の3/4以上の賃金は稼いでいるということになります。

また、同じ資料全文の第2-13表によると、15歳以上で全年齢の日本での男女の就業率は男性が67.5%、女性が47.1%で、ヨーロッパと比較すると上の表で一番男女の収入の差が大きいイギリスでも男性63.8女性53.2、オランダでは男性66.1%女性55.7%、スウェーデンでは男性68.2%女性63.3%と男女の就業率の割合の差もヨーロッパに比べて大きいことが分かります。

ここから言えるのは、ヨーロッパでは日本に比べて女性にとっての結婚によって経済的に生活が変わる人の割合が低く、また離婚に対するハードルもそれに応じて低くなっているということになるでしょう。

私の暮らすイギリスでは、同棲しているだけのカップルでも結婚しているしていないに関わらずカップルとして様々な恩恵を受けることができ、税金やローンを組む時など様々な場面で同棲しているだけで家族として扱わられる部分があります。そういうところを目の当たりにすると、やはりヨーロッパでは結婚には法的な意味合いは少なく、離婚も簡単なため、結婚による結びつきが弱く、それによって事実婚が増えているのだろうなと考えられます。

 

共同親権の考え方

(この話題については別の記事で詳しく書こうと考えています)

このように離婚が多い社会になると問題になるのが子供の育て方ですが、日本では離婚をした際に離婚届に子供の親権者を記す欄があるため、どちらが親権を持つのか決めることになります。しかしヨーロッパでは両親が別居した場合でも、親権を片方が持つことはなく、両者が平等に子供の監督義務を持つことになります。これを共同親権と呼び、日本の単独親権制度とは対する制度になっています。

共同親権の場合、親同士は近所に住まい、子供が一週間ごとや、数日ごと、あるいは平日と休日などに別れて両者と過ごします。何らかの事情で片方が面倒を見る場合にはもう片方が養育費を多く持ちますが、それ以外では養育費も折半です。

そのため親同士は引っ越す場合などに合意が必要で、離婚をしてもある種の家族として子供が成長するまでは少なくとも協力し子育てをしていくことになります。

Wikipediaの共同親権の英語の欄にはわざわざ「日本には共同親権がない」という欄があるくらい、世界的には単独親権というのは珍しい制度です。

この考えが一般的なので、ヨーロッパでは離婚しても別れたパートナーと必要なコミュニケーションを取るのは当たり前で、子供が大きくなるまでの送り迎え程度でしょうが、コミュニケーションはあるでしょう。そのため前のパートナーと会うことを不思議がる人もいませんし、尊敬を持って皆暮らしています。

そうなると、親が再婚をしている場合、子供は複雑な家族関係の中で育つことになり、母親・父親の違う兄弟がいる人も多く、親の再婚相手やその連れ子など、血の繋がらない人ととも親しい存在として付き合っていくことが多いでしょう。

このような制度が一般的なので、子供のために離婚しないという人も少なくて、親同士に愛がなくなれば離婚します。

スウェーデン人の友人の両親は離婚していますが、彼の言葉で印象深いのが「毎日ケンカしていた両親が離婚した時はほっとした。それからは両方と別々に人として向き合うことができるようになった」と言っていて、子どもたちも離婚に肯定的な場合も多いです。

このようにヨーロッパの国々では、男女の親が一緒にいて、そこに子供がいるのが幸せという考えは必ずしも良しとされておらず、様々な家族の形を肯定する環境があります。

 

日本での家族観

子供を不幸にしているのは誰か?

「よく日本では親が離婚すると子供が可哀想」という言葉を聞きますが、それは日本では単独親権であり離婚することで子供が片方の親と会えなくなる可能性があるという部分が大きいと思います。

また親が離婚していることが最近増えているとは言え、世間的には少数派であり、そのことで子供が虐められたり、劣等感を抱いたりしたら可哀想という考えに基づいていたりします。

しかしそもそも、親が離婚していたら可哀想、あるいはまだ日本ではほぼ全く受け入れられいない親が結婚していない家庭で育ったら可哀想、何か後ろめたい理由があるのだろうというのも、日本では「男女の親と子供」という家族観が強すぎて、それ以外の家族は幸せでないという偏見に縛られているからではないでしょうか。

革新的社会制度で有名なスウェーデンで暮らす友人は、親が同性カップル、つまり母親が二人、父親が二人の家庭を沢山知っているが、誰もそれを不幸だと考えていないし、異性カップルの家庭と同じように幸せそうだと語っていました。

日本でも最近同性カップルが里親として受け入れられ始めていますが、それに反対する人の多くの意見は、同性カップルの元で育つ子供が可哀想というものです。

でもそれも家族とは「男女の親と子供」という常識が作り上げたものではないでしょうか?

つまり、家族とはこうあるべきという考えそのものが子供を不幸にするのではないでしょうか。

日本には人と違うと可哀想という考え方があるため、このような様々な家族の形が受け入れられにくいのだと思います。でも、このような同性婚といった新しい家族の形は、今もいる「人と違って可哀想な子どもたち」に「それぞれ皆家族は違う形を持つもの」という新たな救いを与えるのではないでしょうか。

最近では同性愛者への理解が日本でも高まっていて、保健の教科書に思春期の定義として異性に興味を抱くと書いてあることが問題になったり、様々な企業が同性カップルを家族として支援したり、また同性婚制度についても少しずつ議論がされるようになりました。

しかしそれもまだ当事者だけの問題として捉えられがちで、私はここに大きな問題があると思います。

同性婚制度を日本に導入することは、日本人が今強く持つ「家族とは男女の親と子供」という価値観を改めて考えなおし、「家族とは様々な形のある人生を共に歩むグループ」という新たな価値観を作り上げるきっかけになると思います。

 

様々な家族のかたち

 

  • シングルファザー、シングルマザー
  • 子供のいない夫婦
  • 祖父母と孫の家族
  • 親がいない家族(兄弟・姉妹)
  • 血の繋がらない養子親子
  • 血の繋がり、法的繋がり共にない家族
  • 事実婚夫婦
  • 親が三人以上いる家族
  • 一定のパートナーは欲しくないが子供は欲しい人
  • 精子バンク、卵子バンク、代理母を利用した独身の子育て
  • ずっと独身で家族を持ちたくない人

 

など同性カップル以外にも様々な異なる家族の形が存在し得る中で、日本の社会は「男女の親と子供」という形にこだわりすぎて、今ある制度や文化に当てはまらない人々、あるいはそれが性に合わない人などの家族という人生におけるとても大きな要素を享受できず、幸せになれない人がいるのではないでしょうか。

この記事で言及した家族の形は、事実婚や共同親権の話題など家族のあり方としてはごく一部の問題ですが、それ以外にもヨーロッパに住んでいると様々な家族の定義があるなと日々感じます。

そして男女の夫婦という形に拘らず、同性カップルにも同じ家族として不都合なく暮らせる権利を得られるようにすることで、同性カップル以外の人々にも多様性という大きな恩恵を与えると思います。

同性婚が認められたからといって、今ある異性婚がなくなるわけではありませんし、異性カップルには大きな直接的人生の変化はないはずです。しかし社会における生き方の選択肢を増やすことは、多様性を認め、異性愛者にも人と違う部分があっても良いという新たな価値観をもたらすのではないでしょうか。

他にも例えば夫婦別姓問題など、世界的にも珍しい「家族の縛り」が日本には沢山あります。夫婦別姓問題においても、夫婦別姓が認められることが、今まで夫婦同姓にしてきた人ができなくなるわけではありませんし、ここにも家族の多様性、生き方の多様性という価値のある変化が生まれると思います。

同性婚はこの多様性の推進の一貫に過ぎません。しかし同性愛者の割合は私は無視できる割合ではないと思っているので、多様性推進の大きなきっかけとして選ぶことができると思っています。

同性愛者の割合

Wikipediaの同性愛者についての英語版の項で、イギリスでの2017年の調査では18-30歳の12%が自身をLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスセクシュアル)と定義しています。性的嗜好についてはプライベートなことなので、信頼のおける調査というのは匿名でも難しいですが。

日本でもよくマイノリティはこっそり暮らすべきというような意見を聞きますが、もし社会に12%もの同性愛者がいるとしたら、それはマイノリティと呼べるのでしょうか。

例えば学校の40人クラスだったら、うち4-5人は同性に興味のある人ということになります。その中にはもっと割合の少ないもので、支援を受けられるものが沢山あります。

しかし同性愛者はこれだけいるにも関わらず、家族を持つ権利を得られていません。日本では上記の通り、事実婚が少ないことが示すように法的にも社会的にも家族になることで得られる恩恵が沢山あるにも関わらずです。

同性婚することで得られる社会的恩恵は少ないかもしれません、それでもただ一緒に暮らしているよりは、結婚という形で家族となることを宣言したほうが、今の日本では暮らしやすいでしょう。

当事者が結婚制度を求める声は当然です。もしそれが理解できないなら、異性カップルも結婚に意義を見出さないはずですが、婚外子約2%の割合が示す通り、現状世間が結婚に重きを置いているのは明白です。

日本社会の今後

最近ブライダルマガジンのゼクシィが出したキャッチコピーが素晴らしいというのが話題になりました。withnewsでも取り上げていて、そのキャッチコピーが紹介されています。

結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです。

このキャッチコピーが言うとおり、今の時代日本では男女平等化が少しずつ進み、女性の社会進出で、男女の収入差も縮まり、結婚しなくても生活できる人が増えてきています。

将来的には、結婚というのが必ずしも社会的に必要とされず、単に大人同士が合意の元でパートナーとなることが新しい結婚と同等のカップルの定義になっていくのではないでしょうか。そうなれば今のように同性カップルが結婚できないことによって不利益を被ることもなくなり、また男女二人のカップルが子供を育てるという形にこだわらなくなるのではないでしょうか。

そうなれば、結婚は、宗教的な意味合いだけになったり、単に家族になるという宣言であったり、人生の節目におけるシンプルなお祝いごとというだけになって、結婚できなくて不幸だとか思う人もいなくなるのではないでしょうか。

それまでは、まず、今日本に置いて大きな意味を持つ結婚という制度に、様々な多様性を組み込む一貫として、同性カップルが家族になれる制度を制定する必要があると考えています。

多様性の受け入れは、家族の形に限らず、労働のあり方や、人生のキャリアプラン、様々な主義に対する多様性にも繋がります。例えば、今毎日会社に行って働くのが辛い、社会的地位が脅かされず生活できるならパートタイムで働きたいと思っている人にとっても、同性婚制度というのは一見関係がないように見えますが、社会の多様性、生き方の多様性という面では繋がっています。

日本では固定された価値観というのがとても多く、それを生きづらいと考えている人もいます。そのような価値観に一石を投じるのは、多様性の受け入れではないでしょうか。

 

以上、日本で当事者以外も同性婚に賛成すべき理由。ヨーロッパの家族のあり方。でした。